未成年の子による高額消費(オンラインゲーム課金等)について(その2)親のスマホを渡していた場合、未成年者取消はできない?(親権者の同意の有無)

親のスマホを渡していた場合、未成年者取消はできない?

1.本コラムは、「未成年の子による高額消費について」「未成年の子による高額消費(オンラインゲーム課金等)について(その2)」の続きの記事になります。

昨年度、及び今年度に入ってからも、この問題に関する法律相談をお受けする機会が度々あります。

国民生活センターのホームページによると,昨年度(2021年度)に国民生活センターに寄せられた「オンラインゲーム」に関する相談は,2020年12月31日現在で4740件(前年同期4548件)であり(※1),約1700件も増加した昨年度に続き,昨年度も更に増加傾向にあったことが分かります。

 

2.なお、令和4年4月に「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」(※2)が改定されました。

「アプリマーケット運営事業者の責任(プラットフォーム透明化法の反映)」等について改訂されていますが、未成年者取消やオンラインゲームとの関係での改訂はありません。

 

3.さて、よくあるご相談の具体例として、国民生活センターでは以下の事例が挙げられています。

【事例1】小学生の子どもが、友達に「キャリア決済を使うとお金がかからない」と教えられ、スマホでオンラインゲームに高額課金していた

【事例2】小学生の子どもがオンラインゲームで150万円以上も課金していたが、決済完了メールが子どもに削除されていたため気がつかなかった

【事例3】小学生の子どもが、父親のアカウントを使って家庭用ゲーム機で遊び、アカウントに登録されていたクレジットカードを利用して課金していた

【事例4】一度だけ課金するためにスマホにクレジットカードを登録したところ、小学生の子どもが30万円以上も課金してしまった。年齢確認画面で「20歳以上」を選択していたようだ

私がお受けする相談でも、小学生又は中学生のお子さんが、親のスマホで親のアカウントに登録済みのクレジットカードやキャリア決済を利用してしまった、というケースが多いように思います。

これに関連し、「子供に親のスマホを渡していたところ、子供がキャリア決済で高額の課金をしていました。親の名義なので、未成年者取消はできないでしょうか?」というご質問を受けることがあります。

これは、主として親権者の同意がなかったとは言えないのではないか(同意があった場合はそもそも未成年者取消権を行使することができません。)という点から問題になるのですが、その答えは一口には言えません。

この点、上記「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」でも、個々の電子契約と携帯電話の利用契約とは別であり、利用者が未成年者であれば、原則として個々の電子契約ごとに法定代理人の同意の有無が判断されることに留意しなければならない、と指摘されています(※3)。

すなわち、親のスマホを渡していたからといって、直ちに、そのスマホで利用するすべての電子契約(アプリ内の有料アイテムの購入契約等)についてまで、親が同意を与えていたことにはならない、というわけです。

私見ですが、短期間に小中学生の一般的なお小遣いの範囲を超える高額な課金がされたような場合、法定代理人の同意はないケースが多いと思われますので、課金の頻度や課金額の多さから、同意が無かったことが推定される場合もあると思います。

「詐術を用いた」場合に当たるかどうかという問題と同様、ケースバイケースで判断が分かれうる難しい問題ですので、お悩みの場合はお近くの消費生活センターや、弁護士にご相談いただければと存じます。

文責:弁護士伊藤正篤

※1 独立行政法人国民生活センターウェブサイト

http://www.kokusen.go.jp/soudan_topics/data/game.html

※2 経済産業省ウェブサイト

https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/ec/index.html

※3 「携帯電話端末を利用した電子契約では、携帯電話事業者が提供する課金システム(携帯電話の契約者に対して、携帯電話の利用料と合わせてサービスの利用料等(売買代金・情報料等)を請求する、いわゆるキャリア課金)が利用されていることも多いが、個々の電子契約はあくまでも携帯電話の利用契約とは別途、利用者(申込者)とサービス提供事業者間に成立するものであり、利用者が未成年者であれば、原則として個々の電子契約ごとに法定代理人の同意の有無が判断されることに留意しなければならない」

 

関連条文:

民法第五条 未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。
2 前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる。

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