1. 近年,未成年の子どもが親のクレジットカードを利用して,オンラインゲームで高額な課金をしてしまうトラブルが増えています。国民生活センターに寄せられる「オンラインゲーム」に関する相談は,2018年度は4502件であり,前年より400件以上増加しています(※1)。

民法では,未成年者が法律行為をするには,原則としてその法定代理人の同意を得なければならないとされ,法定代理人の同意のない未成年者による行為は,未成年者自身又はその法定代理人が取り消すことができます。そこで,民法の規定に従って,子どもが勝手にした課金を取り消すことができないか,といった相談を受けることがよくあります。

しかしながら,民法では,例外として,未成年者が行為能力者であることを信じさせるため「詐術を用いてした」法律行為等については取り消すことができないものとされており,「詐術を用いてした」に当たらないかどうかが重要な問題となります。

そこで今回は,未成年者が「詐術を用いてした」とされるケースについて経済産業省作成の「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」(※2)を踏まえて解説します。

 

2. 「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」では,「取り消すことができない(詐術に当たる)可能性のある例」として,「『未成年者の場合は親権者の同意が必要である』旨,申込み画面上で明確に表示・警告したうえで,申込者に年齢又は生年月日の入力を求めているにもかかわらず,未成年者が,自己が成年になるような虚偽の年齢又は生年月日を入力した場合」が挙げられています。ここで例に挙げられているのは,単に申込者に年齢又は生年月日の入力を求められているというだけでなく,申込み画面上の明確な表示・警告があるケースであることに注意が必要です(パブリックコメントにおいても,単に未成年者が自己の年齢を偽って入力した程度で詐術に当たる可能性があるとすると,これが事業者に都合よく解釈されるなどして,未成年者の取消権を無力化させる結果につながることが強く懸念されるという旨の意見が提出されています。)。

他方,「取り消すことができる(詐術に当たらない)と思われる例」としては,「単に『成年ですか』との問いに『はい』のボタンをクリックさせる場合」,及び「利用規約の一部に『未成年者の場合は法定代理人の同意が必要です』と記載してあるのみである場合」が挙げられています。これは未成年者保護の要請を強く認める判例・学説の傾向を踏まえた記述であるといえると思います。

 

【確認するポイント】

□ 課金するための申込画面上,親権者の同意が必要である旨の明示がされていた
□ 年齢や生年月日の入力画面があった
□ その画面で未成年者が虚偽の入力をした

→すべてに該当する場合は,取消しができない可能性が高い

 

□ 年齢や生年月日を入力する画面はなく,「成年ですか」との質問に「はい」と答えただけだった
□ 課金する画面では親権者の同意が必要である旨の明示はなかったが,規約を読むとそのように書いてあった

→いずれかに該当する場合は,取消しができる可能性がある

 

3. なお,上記の事例はいずれも取消しできるか否かを断定できる例というわけではなく,それぞれ,詐術に当たる「可能性のある」例,又は詐術に当たらないと「思われる」例ですので,お悩みの方は一度市民総合法律事務所にご相談ください。

文責:弁護士伊藤正篤

※1 独立行政法人国民生活センターウェブサイト

http://www.kokusen.go.jp/soudan_topics/data/game.html

※2 経済産業省ウェブサイト

https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/ec/index.html

 

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