1. 成年後見人は、成年被後見人の財産を管理するにあたって、善良なる管理者としての注意義務を負います。成年後見人の財産と成年被後見人の財産とは厳格に区別して管理する必要がありますし、成年後見人自身のために成年被後見人の財産を費消することはもちろん許されません。

しかし、成年後見人が親族であれ専門職であれ、成年後見人による成年被後見人の財産の費消・横領といった不正事案はどうしても無くなりません。

そこで、そのような不正を少しでも減らすための方策の一つとして、平成23年頃より「後見制度支援信託」が導入されています。

 

2. 後見制度支援信託とは、成年被後見人の財産のうち、日常生活を行うために必要な預貯金を成年後見人が管理し、それ以外の預貯金を信託銀行等に信託する制度です。

信託銀行に信託した財産については、信託契約時に予め定められている場合を除き(例えば毎月の収支が赤字である場合には、毎月一定額を信託銀行から成年後見人が管理する預貯金口座に送金するよう定めることができます)、裁判所の許可(指示)が無ければ引き出すことはできません。

近時の家庭裁判所の実務では、成年被後見人の預貯金が一定額以上ある場合には、後見制度支援信託の利用を検討するよう指示されることが多いようです。対象となる預貯金額は公表されておらず、また各地の家庭裁判所によって多少ばらつきがあるようですが、概ね数百万円から1000万円を超える預貯金がある場合には、後見制度支援信託の利用検討対象となるようです。

 

3. 家庭裁判所が後見制度支援信託の利用を検討すべきであると判断した場合、原則として、家庭裁判所は専門職後見人を選任します。そして、専門職後見人が後見制度支援信託の利用の適否を検討し、検討結果を家庭裁判所に報告、その後家庭裁判所の指示のもと、後見制度支援信託契約を締結します。通常、同契約締結後、専門職後見人は辞任し、親族後見人に引き継ぎます。

なお、一定額以上の預貯金が存在する場合に必ず後見制度支援信託が利用されるわけではありません。成年被後見人が賃貸不動産や株式等の信託できない財産を多く有する場合や、遺産分割・交通事故の損害賠償請求等、専門職後見人の関与が適当な場合、親族間の対立が激しい場合などは、後見制度支援信託を利用せず、あるいは一部利用したとしても専門職後見人が辞任せずそのまま後見人を続けることもあります。

 

4. 先ほど述べましたとおり、後見制度支援信託を利用する場合、原則として専門職後見人が選任されます。信託契約を締結後に専門職後見人が辞任した場合でも、専門職後見人に対する報酬は発生します。また、後見制度支援信託制度を取り扱う信託銀行等は限定されております。

そこで、後見制度支援信託類似の制度として、近時「後見制度支援預金」が導入されております。基本的な仕組み、例えば一定額を金融機関に預け、家庭裁判所の許可(指示)がない限り成年後見人が引き出すことはできない、という点は後見制度支援信託と同様です。主な相違点としては、①必ずしも専門職後見人の選任が必須ではない、②成年後見制度支援信託に比べ取り扱う金融機関が多い、という点です。

なお、後見制度支援預金の取り扱いが始まったのは比較的近時であり(東京家庭裁判所では平成30年6月から開始)、今後の運用状況に注目していきたいと思います。

【弁護士 奥 祐 介】