令和2年5月26日,「インターネット上の誹謗中傷を抑止するため,投稿した人物を特定できるように仕組みの見直しを速やかに進める考えを総務大臣が示した」という趣旨の報道がありました。

現在の法制度の下では,SNS上の投稿の発信者が誰か(氏名住所連絡先等)を特定するためには,一般的には,以下のとおりいくつかのハードルを越えなければならず,しかも速やかに手続をしなければなりません。

1.投稿の内容が名誉毀損,プライバシー侵害等にあたるか,また,その投稿の内容を保存してあるか(権利侵害情報が確認できるか)

2.問題の投稿に発信者が使用したIPアドレス等をSNSの管理者等(コンテンツプロバイダ)から開示してもらうことができるか(プロバイダ責任制限法に基づく発信者情報開示請求訴訟(仮処分)が必要になることが多い)

3.(2で開示されたIPアドレス等を基に)インターネットサービスプロバイダから発信者情報を得ることができるか(プロバイダ責任制限法に基づく発信者情報開示請求訴訟が必要になることが多い)

このプロバイダ責任制限法については,従来から,裁判外での開示は基本的には不開示となることが多いとか,裁判をすることによって多くの時間と費用を要するといった指摘がなされてきました。実際にも,被害に遭われる方の中には,IPアドレスの開示や発信者情報開示のための裁判費用を用意できないとか,時間が相当かかるのであれば意味が無いなどの理由で,発信者の特定を断念せざるを得ない方もいらっしゃいます。

今回総務省はプロバイダ責任制限法の仕組みについての有識者会議を設置しており,裁判を起こさなくても情報開示を受けられる仕組みや,投稿者を特定するために開示する情報の対象に電話番号を加えることなどを検討しているようです。

プロバイダ責任制限法は,いわゆる誹謗中傷(名誉毀損)に限らず,著作権侵害等も含め,ネット上の投稿等によって権利侵害が認められるケースの被害救済に活用される重要な法律です。今回の検討を通じて,より被害者救済に資する改正につながることを期待したいと思います。

インターネット上の誹謗中傷については,昨今,特にご相談が増えている分野であり,刑事告訴の対応や,各コンテンツプロバイダ(5ちゃんねる,Twitter,Facebook,Instagram等)に応じた開示請求も含めて広くご相談に応じられますので,お悩みの点がありましたらお気軽にご相談ください。

文責:弁護士伊藤正篤